半分、青い。

 2018年度上半期のNHK連続テレビ小説のタイトルが「半分、青い。」で、現在放送中です。岐阜県東濃地方で生まれたヒロインである楡野鈴愛(にれのすずめ)が、故郷の岐阜県と東京を舞台に高度成長期の終わりから現代まで漫画家を志し、紆余曲折を繰り返しながら成長していく物語です。江南市の木曽川の川岸もロケ地として鈴愛と律(りつ:誕生日が同じ幼なじみで大の仲良しの男の子)が頻繁に訪れる場所として出てきました。

 鈴愛は小学3年生の時(1980年)に左耳に異変を感じるようになり、町医者を受診し名古屋の大学病院を紹介され精密検査の結果、医師から二度と聴力は戻らないと宣告されます。彼女は左耳の聴力を失い、律の前で涙を流しますが、その後「左耳で小人が踊っている」と前向きに捉え、律や家族の思いやりに支えられながら成長していきます。

 ドラマ上の話ですが、鈴愛が難聴となった原因は“おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)”だったのです。自覚症状が無いまま“おたふくかぜ”に感染し、難聴を発症したのです。日本ではおたふくかぜワクチンの発売開始は1982年ですので、ワクチンによる難聴予防はできない時代でした。


 おたふくかぜは軽い病気と思われがちですが、実際には様々な合併症を伴うことがあります。耳下腺炎(ほほが腫れます)、合併症として10~100人に一人の割合で見られる無菌性髄膜炎は後遺症もなく治りますが、比較的頻度が高く、生涯にわたり問題となるのが“おたふくかぜ罹患後の難聴(ムンプス難聴)”です。音を感じる神経がおたふくかぜウイルスによって壊されてしまいますので、現在の医学では治すことはできません。大きくなってかかると、難聴だけでなくめまいや耳鳴りを伴って日常生活に大変支障をきたすことになります。

 自然感染ではムンプス難聴は約1,000人に1人の割合で発生しますが、おたふくかぜワクチン接種済者ではきわめてまれです。

 日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会が昨年発表した調査では、2015~16年の2年間で、少なくとも全国で348人がおたふくかぜのウイルス感染が原因で難聴になり、うち両側難聴16例を含む274人に重い難聴が残ったと報告されています。

 “でもおたふくかぜには有効なワクチンがあります。”

 多くの先進国ではおたふくかぜワクチンが定期接種となっており、計2回の接種が行われています。そのため、おたふくかぜ罹患後の難聴はほとんど見られません。日本では残念ながら任意接種となっていますが、ぜひ接種したいワクチンです。日本小児科学会は 2 回の予防接種を推奨しています(1歳と小学校入学前の1年間)。2018年5月に17の学会などでつくる予防接種推進専門協議会はおたふくかぜワクチンの定期接種を求める要望書を厚生労働省に提出しました。でもまだ定期接種となっていませんので、待っていて難聴になってからでは遅いのです。


 大切な子供さんのために、おたふくかぜワクチンを2回プレゼントしましょう!

2018年07月05日