元気な発熱ならLet it Be

  昨年12月31日に日本で最も国民的人気グループであったSMAPが解散し、SMAPファンにとっては大変寂しい年となりました。表題のLet it Beですが、SMAP以上に世界的な人気グループであったビートルズ活動中の最後シングル盤のタイトルです。

 ところでLet it Beの意味は?と聞かれると私のような英語が不得意な人は返答に困ってしまいます。Let it Beを辞書で調べてみますと「ありのままに」、「自然の成り行きにまかせる」、「そのままにしておきなさい」などの意味があり、また「心配するな」とのニュアンスも含んでいると書かれています。

 今回のお話しは、小児科クリニックで訴えの多い発熱について考えてみます。
 皆さんは、風邪などにかかるとなぜ熱が出るか考えられたことはありますか?子供さんに限れば、発熱の原因の8~9割は風邪などのウイルス感染症です。外来で使用できるウイルスに効果のある薬は、インフルエンザ(タミフルなど)と水ぼうそう(アシクロビルなど)に対する薬しかないのです。熱が出ると抗生剤が処方される場合がありますが、ウイルス感染症には抗生物質の効果は残念ながらありません。風邪薬も同様です。

  実は発熱そのものはウイルス・細菌感染症にかかった時に、大切な働きをしています。体内にウイルス・細菌が侵入し増殖すると、人はそれに対抗するために臨戦態勢をとります。その臨戦態勢の一つが体温を上昇させることです。体温が上昇するとウイルスなどの増殖が困難になり、またウイルスなどを撃退する免疫力の働きも高まります。また安静にすることも、免疫力を高めることにつながります。発熱は感染症の初期には必要であり、無理に体温を下げるのは好ましくないのです。

 発熱があり診察を受け、風邪などの可能性があり少し経過見ましょうと言われても、発熱の多くは2~4日ほど続きます。特に夜間は高熱となりやすく大変寝苦しくなりますが(ご両親も高熱が出れば夜はぐっすりと寝ることはできませんね!)、朝熱が少し下がり気味で、おもちゃなどで遊ぶことができる、食欲低下はあるが水分は摂取できるなど全身状態が比較的良好なら少し様子を見ていただいてよいでしょう。発熱した後、すぐに熱が下がらないからといって解熱剤の使い過ぎはお薦めできません。治癒する期間が長引く可能性があるためです。小児の解熱剤は作用が穏やかで、期待するほど下がらないこともあります。夜などに高熱で泣いてばかりいる、痛みを強く訴える時などに限定して使用しましょう。  子供さんの発熱で注意していただくことは

①生後半年までの赤ちゃんの発熱

②元気がない、ぐったりしている、顔色が悪い、いつもの発熱時と様子が異なる

などは単なる風邪などのウイルス感染症ではなく細菌感染症等の可能性もあるため早めの受診が必要です。

 赤ちゃん以外の子供さんで、診察を受けた上で発熱期間が3日以内であり、比較的元気なら

    Let it Be (発熱はそのままで、すぐには心配しないで)

 ただし発熱が4日以上持続している時は再度診察を受けてください。

 

 

2017年10月23日